シドニーからメルボルンまで内陸をドライブする8日間の旅
オーストラリアの2大都市、シドニーからメルボルンまで車で旅をすれば、オーストラリア文化の本質を知ることができるでしょう。
原文:マーク・チッパーフィールド
シドニーとメルボルンの間をドライブすれば、大きな空と美しい景観以上のものと出会えます。ビーチ好きには海岸沿いルートが魅力的かもしれませんが、内陸に向かうこの象徴的なロードトリップで、あまり知られていない見どころを探索してみませんか。8日間の旅で、オーストラリアで最も有名な博物館や美術館、カルチャー・センターの数々を巡ったり、子供たちを砂金堀りに連れて行ったり、建築学的に美しい街を歩き回ったりして楽しみましょう。
見どころ
- 象徴的なシドニー・ハーバーでセーリング
- キャンベラの美味しいトリュフを探す
- 美しいソブリン・ヒルを家族で楽しむ
基本データ
- 日数:8日間
- 距離:878km
- 移動手段:車
- 最寄りの主要都市:シドニー
- 料金:$$
1日目:シドニー
シドニーは早起きの街。日の出時に元気いっぱいの地元の人に交じって、子供たちと一緒にシドニー・オペラ・ハウス(Sydney Opera House)や植物園の周りを散歩したり、ボンダイ・ビーチ(Bondi Beach)で泳いだりしてみてはいかがでしょう。続いて中心街にたくさんある軽食店で気ままに朝食をどうぞ。シドニーで最も人気の朝食スポット、ビルズ(Bills)の世界的に有名なリコッタ・ホットケーキは見逃せません。ちょっと斬新な朝食がお好みでしたら、デボン・カフェ(Devon Café)にはそば粉のビリニ(ロシアのパンケーキ)からヤクザ・バーガーまで幅広いメニューが揃っています。朝食後はシドニー・オペラ・ハウス(Sydney Opera House)の舞台裏ツアーに参加して、朝のアクティビティを締めくくりましょう。デンマーク人建築家ヨーン・ウッツォンが1957年に設計したオペラ・ハウスは、20世紀建築の代表作と謳われています。続いてフェリーに飛び乗り、シドニー・ハーバー(Sydney Harbour)の入り口にあるビーチサイド地区、マンリー(Manly)へ。船上からは、シドニー・ハーバー・ブリッジ(the Sydney Harbour Bridge)やフォート・デニソン(Fort Denison)、タロンガ動物園シドニー(Taronga Zoo Sydney)など中心街の有名な名所を眺められ、往復で大人1名約15オーストラリアドル(子供はより安い料金)です。またシドニーで最も値段の高い不動産もいくつか見ることができ、アドミラルティ・ハウス(Admiralty House)もそのひとつ。この優雅な植民地時代の邸宅は1843年に建てられてもので、オーストラリアの国家元首である総督のシドニー官邸です。くつろいだ雰囲気のマンリーは、安全な遊泳と家族連れに優しいレストラン、そして人間観察に最適なスポットです。
2日目:シドニーからボウラルへ
この日の朝にレンタカーを借りて、南西へ向かいドライブ旅行に出発。シドニーから2時間弱、絵に描いたような村落と緑の野原、アンティークショップ、小さなワイナリーで知られるサザン・ハイランズ(Southern Highlands)に到着します。小さな子供連れの家族には、サールミア(Thirlmere)のNSW鉄道博物館(NSW Rail Museum)に立ち寄ってみるのがおすすめです。ボウラルへの旅を続けましょう。クリケットファンなら、ジュード・ストリート(Jude Street)にあるブラッドマン博物館(Bradman Museum)は見逃せません。オーストラリアで最も有名なバッツマン(打者)、サー・ドナルド・ブラッドマンに関する記念品の膨大なコレクションを所蔵しており、「ザ・ドン(The Don)」が彼のキャリアを始めたクリケット競技場を見渡せる場所に立っています。
ランチの後は19世紀の街並みが残る村ベリマ(Berrima)へ向かい走りましょう。歴史ある裁判所博物館(Courthouse Museum)とベリマ刑務所(Berrima Gaol)はどちらも訪れる価値あり。冒険好きなら、北へ向かいウォンベヤン洞窟(Wombeyan Caves)がおすすめです。これらの人気ある石灰岩の洞窟は、カナングラ・ボイド国立公園(Kanangra-Boyd National Park)の南端に位置しています。ボウラルにより近いもうひとつの美しい場所、フィッツロイ・フォールズ(Fitzroy Falls)を眺めてから、帰り道は多くの人に愛されるブラウン・ビレッジ・ホテル(Burrawang Village Hotel)に立ち寄りましょう。ホテルのパブは飾らない郷土料理と、ビールやエール、ワインの充実セレクションが魅力で、上階には客室があるので一晩泊まることも可能。もうちょっと高級志向なら、ビオタ・ダイニング(Biota Dining)のディナーを事前に予約しておきましょう。木曜日から月曜日のランチとディナーに営業しています。ビオタの革新的な複数コースメニューは地産の農産物やシーフード、肉類が主役で、この料理を味わえば、食の冒険へと連れて行ってくれるでしょう。
3日目:ボウラルからキャンベラへ
ボウラルから168km走りキャンベラを目指しましょう。途中には魅力が満載なので、ドライブをゆっくり楽しむのがいいでしょう。高さ15mものビッグ・メリノ(Big Merino)があるゴールバーン(Goulburn)は、道中で最初に出会う大きな街です。地域の見どころは、ロッキー・ヒル戦争記念碑(Rocky Hill War Memorial)やセント・セイビアーズ大聖堂(St Saviour’s Cathedral)、歴史水道博物館(Historic Waterworks Museum)など。寒い冬の夜には、ザ・ハウス・オブ・アルパカ(The House of Alpaca)でマフラーなど暖かいアルパカ製品のお買い物もおすすめです。そろそろお腹がすいてきたなら、南へドライブしてジョージ湖(Lake George)の湖岸にあるレリダ・エステート(Lerida Estate)へ。ブドウ園の人気カフェでは美味しい季節のメニューを、セラードアでは自家栽培・製造のエステート・ワインを堪能しましょう。
午後の散策は、キャンベラの北にあるカントリーサイドがおすすめ。ホール(Hall)やガンダルー(Gundaroo)、ムランベイトマン(Murrumbateman)などの素敵な村落の他にも、この地域随一のワイン生産者も訪ねてみましょう。マウント・マジュラ(Mount Majura)やタラガンドラ・ヒル(Tallagandra Hill)、ギャラガー・ワインズ(Gallagher Wines)、ショウ・ヴィンヤード・エステート(Shaw Vineyard Estate)は全て高評価の生産者です。特別なごちそうなら、ポーチャーズ・パントリー(Poachers Pantry)へ向かいましょう。この田舎の燻製場は20年以上にわたりキャンベラの人行きつけの場所。ポーチャーズのハムやチーズの盛り合わせを注文して、ウィリー・トラウト(Wily Trout)ピノ・ノワールやシラーズと合わせて味わいましょう。
4日目:キャンベラとその周辺
アメリカの建築家ウォルター・バーリー・グリフィンが設計したキャンベラは、退屈なガーデン・シティと表現されることが多々ありますが、現実はまったく違います。オーストラリアの首都は見事に計画されているだけでなく、オーストラリアで最も重要な文化的名所がある街なのです。中でも卓越した名所がオーストラリア国立美術館(National Gallery of Australia)で、地球上で最も上質な芸術作品の数々を所蔵しています。同じく見ごたえがあるのはオーストラリア戦争記念館(Australian War Memorial)。記念館(the Hall of Memory)とオーストラリアの無名戦士の墓(Tomb of the Unknown Australian Soldier)を訪れるのもお忘れなく。
キャンベラの生活は政治を中心に回っていますが、なんと国会議事堂(Parliament House)のツアーも可能です。キャンベラは楽しみ方をよく知る街ですから。自転車を借りて午後はバーリー・グリフィン湖(Lake Burley Griffin)の周りをサイクリング。キャンベラ・グラスワークス(Canberra Glassworks)で手拭きガラス教室に参加したり、トリュフ狩りに挑戦したりするのもいいでしょう。近隣にトリュフ農園がいくつかあり、またキャンベラではトリュフ・フェスティバル(Truffle Festival)が毎年冬に開かれます。そして子供たちが楽しめる場所もたくさんあります。コッキントン・グリーン・ガーデンズ(Cockington Green Gardens)やクエスタコン(Questacon)科学技術博物館、国立動物園と水族園(National Zoo & Aquarium)など選択肢は満載。オーストラリアのトップ・アスリートが所属するオーストラリア・スポーツ協会(Australian Institute of Sport)では、訪問者でもセンターにある2つのオリンピック・プールを利用できます。
5日目:キャンベラからワガワガへ
この日は朝早く出発しましょう。本日の旅程は、まず北へコジオスコ国立公園(Kosciuszko National Park)沿いを通ってヤス(Yass)へ向かい、続いてガンダガイ(Gundagai)とワガワガ(Wagga Wagga)を旅します。田舎町のヤスで足を延ばして、残りのドライブに備えましょう。この豊かなコミュニティにはカフェやギフトショップが充実しています。暖かい日なら、街のプールで涼むのもいいですね。次の立ち寄りスポットは、ジャック・モーゼズの詩にその名をとどめるガンダガイ。もし食料箱に乗る犬(Dog on the Tuckerbox)の記念像を探しているなら、実は街の北8km、ヒューム・ハイウェイ(Hume Highway)からすぐの場所にあります。
ガンダガイはゴールドラッシュの時代に起源をもつ歴史ある街で、ブッシュレンジャーのキャプテン・ムーンライトはこの地の墓地に埋葬されています。インフォメーション・センターでマップを手に入れて、セルフガイドでメインストリートのウォーキング・ツアーを楽しみましょう。続いて、リベリナ(Riverina)地域の中心地、ワガワガへ向かいます。見どころは、植物園(Botanic Gardens)やリベリナ博物館(Museum of the Riverina)、小さな子供にはミニチュア鉄道(miniature railway)など。ワガワガ美術館(Wagga Wagga Art Gallery)はオーストラリアの版画や複製画、現代ガラス作品の上質なコレクションを所蔵し、コンテンポラリー・アーティストによる展覧会も開催しています。ブティックホテル、フォックス・アンド・コー(Fox and Co)に滞在する
6日目:ワガワガからベナラへ
ワガワガから南へ少し走ると、ビクトリア州(Victoria)との州境にまたがる「双子の街」、オルベリー - ウォドンガ(Albury - Wodonga)があります。マレー川(Murray River)の岸に位置するオルベリーは、田舎町のイメージから脱却し、クリエイティブアート、食とワイン、独自の魅力的な伝統を活かして街づくりをしています。観光客はマレー美術館オルベリー(Murray Art Museum Albury:MAMA)を含む現代美術館の数々を楽しめます。ランチは地域で有名な「ハット(オーストラリア版ミシュランの星)」レストランミス・アメリー(Miss Amelie)に立ち寄りましょう。季節のモダンヨーロッパ料理を提供しており、地産ワインと輸入ワインの膨大なセレクションが自慢です。
車に戻る前に体を動かしたければ、自転車を借りて、オルベリー - ウォドンガの90kmあるサイクリングロードを走ってみるのはいかがでしょうか。また、カヤックやセーリング、釣り、水上スキーも楽しめます。ウォンガラッタ・サウス(Wangaratta south)からのドライブは、ケリー・カントリー(Kelly Country)の奥深くへと入っていきます。グレンロワン(Glenrowan)やグレタ(Greta)、ベナラ(Benalla)は、オーストラリアで最も悪名高きお尋ね者ネッド・ケリー(Ned Kelly)を知る人なら誰でも聞きなれた名前でしょう。ワイン愛好家なら、ちょっと遠回りしてキング・バレー(King Valley)に寄り、オーストラリア随一のイタリアの品種であるサンジョベーゼ(sangiovese)やネッビオーロ(nebbiolo)、ヴェルドゥッツオ(verduzzo)などを試飲してみてはいかがでしょう。
7日目:ベナラからバララットへ
次のドライブ・ルートは、整った農地や農場、絵のように可愛らしい町、道端にある農産物の売店などが点在するカントリーサイド、ビクトリア州中心部を横切ります。ユーロア(Euroa)やセイモア(Seymour)などの街を通過するルートですが、ほとんどの人はビクトリア州の「スパ・カントリー」であるデイルスフォード(Daylesford)周辺でゆっくり過ごしたいはず。ぜひ立ち寄りたい場所はヘップバーン・バスハウス&スパ(Hepburn Bathhouse & Spa)です。ゆったり共同浴場に浸かるか、プライベートマッサージやエステメニューからお好みでどうぞ。その後ラバンデュラ・スイス・イタリアン・ファーム(Lavandula Swiss Italian Farm)へ出掛け、ラベンダーの石鹸やローション、ミスト、さらにラベンダー味のスパークリング・ワインのショッピングを楽しみましょう。
午後はバララットで一番有名な見どころ、ソブリン・ヒル(Sovereign Hill)で過ごします。最初にオープンしたのが1970年の広々とした野外博物館で、現代のオーストラリアを形作ったゴールドラッシュ時代を記念しています。忠実に再現された街並みは、19世紀の未開の地オーストラリアを体感できます。子供たちは砂金堀りに挑戦するか、地下の鉱山ツアーに参加するのがおすすめ。ソブリン・ヒルには、カフェやレストラン、モーテル・スタイルの宿泊施設まで揃っています。
8日目:バララットからメルボルンへ
高速道路でメルボルンへ直行するより、最終日の朝は南へ曲がってジーロング(Geelong)とベラリン半島(Bellarine Peninsula)に向かってみませんか。素晴らしいレストランやクラフト醸造所、ブティック・ワイナリー、目を見張る海岸線の風景など見どころが揃った、ビクトリア州で最も魅力的な地域です。ビール好きならホワイト・ラビット・ブリュワリー(White Rabbit Brewery)に立ち寄り、ワイン好きならスコッチマン・ヒル(Scotchmans Hill)で冷涼性気候ワインを試飲しましょう。子供や若者なら、ジーロング(Geelong)にあるミニチュア鉄道やロッククライミング、アドベンチャー・パークがおすすめ。
ジーロング(Geelong)からメルボルンまでは車ですぐです。ランチのすぐ後に出発すれば、チャペル・ストリート(Chapel Street)でショッピングしたり、セント・キルダ・ビーチ(St Kilda Beach)でカヌーを漕いだり、メルボルン・スター・オブザベーション・ウィール(Melbourne Star Observation Wheel)の観覧車に乗ったりして楽しむ時間が十分とれるでしょう。メルボルンはスポーツや芸術にも同じくらい情熱的な街。ビクトリア国立美術館(National Gallery of Victoria)と国立スポーツ博物館(National Sports Museum)を訪れて、スポーツと芸術両方を存分に満喫しましょう。もしくは、ダンデノン丘陵(Dandenong Ranges)までドライブするのもおすすめです。美味しい食事と緑生い茂る庭園、素敵なウォーキング・トラックに加え、ダンデノン丘陵にはパフィング・ビリー鉄道(Puffing Billy Railway)があります。蒸気機関車に乗って、子供からお年寄りまでワクワクする冒険へ出かけましょう。